東京から北陸新幹線で長野へ。長野から電車とバスを乗り継ぎ約50分。川沿いに開けた信州・渋温泉(しぶおんせん)。由緒ある宿が連なる温泉街は情緒たっぷりです。今回ご紹介するのは、創業400年の歴史を誇る 渋温泉 ひしや寅蔵(とらぞう)。木造三階建ての堂々たる佇まいは老舗の風格がただよいます。
歴史ある渋温泉の中でも草分け的なひしや寅蔵。あまた訪れた湯治客の中には、幕末の先覚者・佐久間象山(さくましょうざん)や劇作家・島村抱月(しまむらほうげつ)などの名も。時代の波に呑まれることなく守り継がれて400年。現在の宿は大正時代に建てられたもの。木造のそこかしこに当時のモダンなデザインが見てとれます。日本の温泉文化の一端がここにあります。
渋温泉には40近くの源泉があり、ひしや寅蔵では、そのうち泉質の異なる四つを引き湯しています。館内には三つの湯殿があり、とっぷりと温泉三昧にひたれます。もちろんすべて源泉掛け流し。湯船を満たす温泉は二つの源泉を合わせた宿オリジナルのにごり湯です。
男女入替え制の内湯と貸切にもできる露天風呂。浴槽によって異なる温泉で、その湯の違いが楽しめます。露天風呂には三つの石風呂があり、お庭を貸し切っているようなぜいたくさです。また渋温泉では、宿の宿泊者は九つある外湯がすべて無料で利用できます。湯の町を浴衣に下駄で外湯めぐり。渋温泉ならではのもてなしです。
渋温泉の外湯のひとつ「渋大湯」(しぶおおゆ)は、古来、万病に効能ありと伝えられ、地元の人に親しまれてきた昔ながらの共同浴場です。褐色のにごり湯は体の芯から温まり、湯冷めしにくい名湯。源泉掛け流しのありがたみを心底感じられます。
夕食はお部屋食または個室の食事処で。お造りは信州サーモン。煮物はみゆきポークのスペアリブ。陶板焼きで楽しむのはリンゴで育った信州牛。焼き加減はレアがおすすめ。ニジマスは信州味噌に付けて焼きあげます。一品一品にもてなしの心が込められた老舗宿の夕げ。満足できます。
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