島根県松江市・宍道湖(しんじこ)の湖畔に面した松江しんじ湖温泉。松江城をはじめ松江の観光スポットにも近くモデルコースを散策するにはおすすめの温泉地です。今回ご紹介するのは、松江しんじ湖温泉の皆美館(みなみかん)。松江の中心にあるので城下町巡りも楽しめます。
皆美館の創業は明治21年(1888年)。小説家・川端康成や彫刻家・棟方志功をはじめ芥川龍之介、直木三十五(なおきさんじゅうご)など、名だたる文人墨客(ぶんじんぼっかくに)愛されてきた老舗旅館です。
上の写真の客室は藤村の間(とうそんのま)。小説家・島崎藤村が息子と宿泊したお部屋です。藤村はそのときのことを『山陰土産』(さんいんみやげ)という本に書いています。
「これはいい宿だ。私と鶏二(けいじ)とは互いにそれを言って、出雲らしい空の見える二階の部屋にくつろいだ」(島崎藤村『山陰土産』より)
藤村はこの風景が気に入り、宍道湖(しんじこ)の舟遊びを楽しんだといいます。皆美館(みなみかん)には、島崎藤村直筆の書も額に入れられ家宝として飾られています。
こちらは宍道湖を眺めながら湯浴みが楽しめる展望温泉風呂。源泉は松江しんじ湖温泉。泉質は無色透明・無味無臭。肌にやさしい美肌の湯として親しまれています。さらりとした肌触りが心地よく、ついつい長湯をしてしまいます。
松江しんじ湖温泉・皆美館の夕食です。もてなしは季節の山陰の恵みがぎっしり詰まった会席料理。まず目につくのが焼き魚・スズキの奉書焼き(ほうしょやき)。殿様に捧げたという松江の名物料理です。
冬の宍道湖で獲れた脂の乗ったスズキに塩を振り、奉書に包んで蒸し焼きに。和紙の香りが独特の風味を生み出します(料理は季節と仕入れによって替わります)
続いては山陰を代表する冬の味覚・松葉蟹。炭火焼きでいただきます。カニ味噌も香ばしく、お酒に合います(松葉ガニ料理は解禁の11月上旬から翌年2月末まで楽しめます)
松江の郷土料理・十六島(うっぷるい)海苔雑煮もいただけます。お椀の蓋(ふた)を開けると具は海苔だけのお雑煮。ところがこれがおいしいんてす。
十六島海苔(うっぷるいのり)とは島根県出雲市で採れる岩海苔。香りがいいので、ほかの具を入れないほうが海苔の香りがより楽しめるそうです。
松江の美味と名湯を心ゆくまで堪能。島崎藤村も称賛したように、松江しんじ湖温泉 皆美館 は、たしかに、いいお宿です。