まわりを田んぼに囲まれた福井県の芦原温泉(あわらおんせん)。開湯は明治16年。井戸を掘っていたら湯が沸き出してきたのが始まりで、関西の奥座敷として年間100万人以上が訪れる人気の温泉地です。
いい湯であることには定評があり、温泉療法を専門とする医師が勧める名湯100選にも選ばれています。そんな芦原温泉に二十数軒ある宿の中でもその名が知られているのが「 べにや 」。芦原温泉開湯の翌年、明治17年が創業という老舗旅館で、天皇皇后両陛下が皇太子時代に二度宿泊した宿としても知られています。
2018年5月5日、べにやで火災が発生。国登録有形文化財になっている木造二階建ての本館・中央館・東館の三棟が全焼しました。
昭和31年(1956年)に起きた芦原温泉の大火災。その後に建てられた全23室の建物は国の登録有形文化財にも指定されています。
玄関を入ると落ち着いたロビーラウンジが出迎えてくれます。その目の先に広がるのは宿自慢の500坪の日本庭園。
お風呂はもちろん源泉掛け流し。70度近い源泉を適温にするのは湯守(ゆもり)の仕事。源泉の湯量を調節することで絶妙の湯加減を生み出します。
こちら(上の写真)は、庭の趣を肌で感じることができる露天風呂。癒しあふれる中、芦原(あわら)の湯にじっくりとつかれば、日ごろの疲れもふっとんで、身も心もくつろげます。
昭和43年(1968年)福井国体に臨席(りんせき)のため福井を訪れた皇太子時代の天皇皇后両陛下。そのときに宿泊されたのがべにや。二度目に訪れたのには昭和55年(1980年)全国育樹祭(ぜんこくいくじゅさい)に臨席されたとき。
こちらのお部屋(上の写真)が、皇太子時代の天皇皇后両陛下が宿泊された特別室・呉竹の間(くれたけのま)。皇室が宿泊されることを想定して、宿のいちばん奥、警備がしやすい庭に面した場所に造られました。網代天井(あじろてんじょう)の下に広がる10畳の本間は、茶室を思わせる和風建築の数寄屋造り。
窓からは美しい庭が見渡せ、季節の移ろいを部屋にいながら感じられます。
反対側からは雪見障子越しに坪庭の雰囲気が楽しめます。なんとも優美で贅沢な空間です。
こちら(上の画像)のお部屋も茶室のようで風流。土壁(つちかべ)が部屋の湿度を調整してくれるので一年中快適です。隣には次の間があり、さらにその奥には浴室があります。
皇室の方々は基本、大浴場は使われません。そこで大切なのが部屋のお風呂。上の写真が特別室・呉竹の間(くれたけのま)専用の源泉掛け流しという総檜造りのお風呂です。天皇皇后両陛下が二度宿泊された特別室(呉竹の間)は、ふだんは誰でも泊まることができます( 宿泊プラン )
芦原温泉べにやの夕食です。先付(さきづけ)から始まる懐石料理は、福井という自然豊かな土地と海の恵みを使って、厳しい修行を積んできた料理長の技がさえるものばかり。器の輝きにまでこだわった目にも美しい贅を尽くした美味が堪能できます。