福島県会津若松の中心地から車で走ること10分。開湯ははるか天平の時代という会津東山温泉(あいづひがしやまおんせん)。江戸時代には会津藩の湯治場として栄えました。この温泉を求めて訪れた文人墨客も多く、美人画で知られる竹久夢二(たけひさゆめじ)も東山の湯を愛したといいます。
今回ご紹介するのは、会津東山温泉にある登録有形文化財の老舗旅館・向瀧(むかいたき)。江戸時代までは、会津藩の上級武士の指定保養所だった「きつね湯」を明治六年に引き継ぎ創業。受け継いだ平田家が代々この宿をもり立ててきました。
大正時代には、すでに多くの宮様(みやさま)が宿泊されていて、木造建築のたたずまいを守り抜いてきました。建物は国の有形文化財にも登録されています。登録有形文化財とは、歴史的価値などがあることを国が認める制度で、向瀧(むかいたき)は、四つある棟すべてが登録されています。
玄関の棟の二階は、畳120畳の大広間で、天井は会津の桐を使った格天井(ごうてんじょう)。職人の技が光る匠の仕事が随所に見られます。
池の前にある木造二階建ての客室棟は美しい庭を正面から眺められる趣向。そして山の傾斜をそのままに建てられている木造三階の客室棟。
自慢の温泉は会津若松藩から受け継いだ「きつね湯」を今も大切に使っています。古きよき歴史が香る白御影石(しろみかげいし)の湯船。お湯は自然にわき出した源泉を100%掛け流しです。
歴史ある棟々のいちばん上に鎮座するように建っているのが宮内庁指定棟・はなれの間(特別室)です。
ぐるりと廊下が巡らされているその中に、格式高い武家の建築・書院造りの日本間が三部屋。上から見下ろすように自慢を庭が眺められる、まさに貴賓室。
使っている木材も一級品。四方柾柱(しほうまさばしら)といって、四面の木目がすべて平行になっていて、しかも節(ふし)がひとつもありません。あまりに稀少なので、もっとも格式高い場所でしか使われない木材です。
一見、何でもない畳に見えますが、よく見ると、畳縁(たたみべり)の模様がちゃんと合うように作られています。畳職人、渾身の技が光ります。部屋を飾る書は、地元福島の有名人・野口英世(のぐちひでよ)が書いた「美酒佳肴」(びしゅかこう)。歴史と風格を感じさせてくれます。
皇室の宿泊されるお部屋になくてはならないのがお風呂。白を基調とした高貴な感じをかもし出している離れの間・専用の浴室。大理石の湯船に注がれている温泉は、専用の源泉から引かれています。
大正4年の絵はがきに、すでにその存在が確認される向瀧のはなれの間。昭和33年には高松宮(たかまつのみや)さまがスキーをするためお見えになりました。またヒゲの殿下として親しまれた三笠宮(みかさのみや)さまも宿泊しました。
この宮内庁指定棟と呼ばれる「はなれの間」には、一般のお客様でも予約をすれば普通に泊まることができます( 宿泊プラン )
料理は季節ごとに献立を替える会津の郷土料理がいただけます。老舗旅館ならではの極上のもてなし。登録有形文化財の宿・向瀧(むかいたき)。一度は泊まりたいお宿です。
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