冬の福井の味覚といえば越前ガニ(雄のズワイガニ)。中でも甲羅が固く黒いつぶつぶがたくさんついているものは味がよいとされ極上の一級品と言われています。今回は、越前ガニ料理が評判の「福井県あわら温泉べにや」の極上カニ尽くしコース料理を写真とともにご紹介します。
2018年5月5日、べにやで火災が発生。国登録有形文化財になっている木造二階建ての本館・中央館・東館の三棟が全焼しました。
べにやのカニ尽くし懐石。最初に運ばれてくるのはカニ刺し。冬の味覚の王様といわれる越前ガニを生で味わえます。カニはその日に届けられたものを使うので「超」が付くほどの新鮮さ。そのプリプリのカニの身を塩水にさらすと、ふわっと身が広がります。これが俗にいう「花が開いた」という状態。活きがよくないと、こうはならない鮮度の証(あかし)です。
カニ尽くし、続いては炭火焼き。甲羅の上でぐつぐつと音を立てているのはカニ味噌。身の部分はちょっとレアなくらいが食べごろです。焼くことで甘みが増す身の部分は、掻き出して集めておいて、その上に温まったカニ味噌をたっぷりと載せて、いっしょに混ぜていただきます。
さらに先ほどのカニ刺しをカニ味噌に付けていただけば濃厚な香りと旨みが広がります。贅沢このうえなし。至福という言葉の意味が分かるはず。
カニ尽くしのメイン料理はこれから――。カニを丸ごと一杯茹でていきます。こだわりの塩分は 1.1パーセント。沸騰したお湯で茹でること約27分。絶妙な塩加減の極上茹で越前ガニの完成です。さすが冬の味覚の王様。神々しいまでの姿です。
カニというのは身を取り出すのがなかなかたいへん。そこで「べにや」では、女将を筆頭に客室係の仲居さんたちが、毎年、カニのシーズンが始まる前に、身の取り出し方を練習して、冬に備える徹底ぶり。なので、殻以外のすべてを味わい尽くせます。
とどめはセイコガニという雌のズワイガニを使った、べにや特製のセイロ蒸しご飯。外子(そとこ)と内子(うちこ)と呼ばれる卵とほぐしたカニの身をご飯に混ぜていただけば、もう食べられないと思っていても、あっというまに間食です。
至れり尽くせりのおもてなしにとっぷりとつかって極上の越前ガニを味わう幸せ。まさに至福のひとときです(越前ガニが食べられるのは11月から3月までです)