岡山市の北にある秘湯・奥津温泉(おくつおんせん)。江戸時代は津山藩の湯治場として栄えました。今回ご紹介するのは、吉井川沿いに建つ奥津温泉 奥津荘(おくつそう)。創業は昭和2年(1927年)。風格ある木造二階建て。奥津温泉最古の老舗旅館です。
地元産の檜(ひのき)をふんだんに使った館内。映画『秋津温泉』(あきつおんせん)のモデルと言われ、版画家・棟方志功が好んで泊まった宿だったそうです。
こちらのお部屋(上の写真)は源泉掛け流し露天風呂付き離れ。落ち着いた灯りがともり床の間付き。書院造り風の風流な大人の座敷でゆっくりとくつろげます(客室のタイプは宿泊プランの中から選べます)
部屋付きの露天風呂は源泉掛け流しです。もともとは奥津荘は津山藩の殿様の建てた別荘でした。お部屋で旅の荷をほどいたら宿自慢のお風呂へ
こちらのお風呂(上の画像)は鍵湯(かぎゆ)。この場所は、もともとは吉井川の川床(かわどこ)でした。浴槽の底にある花崗岩(かこうがん)のすき間からは、ふつふつと源泉が湧き出ています。津山藩の殿様がひとり占めするほど惚れ込んだ湯は、とろりとしたやさしい肌あたり。まさに殿様気分を味わえます。
奥津温泉・奥津荘の夕食です。もてなしは奥津名物・牛肉のフルコース。山陰と山陽を結ぶ交通の要所だった奥津では古くから荷を運ぶ牛が身近でした。肉食が禁じられた江戸時代も奥津の人々は薬として牛肉を食べていました。しかも部位に応じて食べ分けたのです。
メイン料理は奥津の郷土料理・そずり鍋。骨のまわりに付いた肉をそいだ「そずり肉」を使っていただく牛鍋です。しょう油ベースの甘辛の割り下に肉の旨みが溶け込み、そこに地野菜やきのこを加えます。見た目よりあっさりとした味わいです。〆は、鍋にお蕎麦をいていただく奥津流・そずり蕎麦。牛肉のそずり肉と野菜の出汁がよく合います。
湯船の足元から源泉が湧き出る足元湧出の湯と郷土料理・そずり鍋のもてなし。奥津温泉・奥津荘。静かで上質な時間を過ごせる大人の温泉旅行におすすめしたい湯宿です。