2年間予約待ちの古民家レストラン山歩に行ってきました<埼玉県松伏町>
埼玉県松伏町(まつぶしまち)にある古民家レストラン山歩(さんぽ)。2年待ちはあたりまえ、長いときは3年待ちという予約が取れないお店として地元でも有名なお店です。そんな旬菜ダイニング山歩に予約を入れたのが2年前の2015年――。そして、2017年7月10日。とうとう予約の日がやってきて念願かなって山歩へやっと訪れることができました。
旬菜ダイニング山歩はちょっとわかりづらい場所にあると聞いていましたので、山歩のホームページに載っていた「埼玉県松伏町築比地2089」をカーナビにセット。築比地の読み方は「つきひじ」。見過ごしてしまいそうだという最後に曲がる場所だけしっかり確認して出かけました。いっしょに出かけた助手席のエミちゃんが「ここだ、ここ!」と、道路沿いの小さな看板を見つけてくれたので、迷うことなく駐車場までたどり着きました。
お店(山歩)の場所は、自然豊かで静かな農村といった雰囲気。垣根の入り口を入ると手入れが行き届いた見事な大きなお庭が広がっていて、その奥に古民家風の日本家屋のお店があります。お庭に沿った窓際からは、ゆったりした雰囲気でお食事を楽しんでいるお客さんたちの様子がうかがえます。
山歩に着いたのが11時50分。予約時間(12時)の10分前です。お店の中に入ると広々とした玄関がお出迎え。奥からすぐにお店の方が出てこられ、予約の確認をすませると席に案内してくれました。玄関脇の下足入れに履き物を脱いで上がります。
玄関を上がったホールの脇にはセンスのいい小皿や花瓶などが置かれていて、販売もされている様子。帰りに見せていただこうかな。
店内は、かなり広そうで、玄関ホールの左右、さらに奥にも客室があります。私とエミちゃんは厨房からほど近い小上がりの席に通されました。
ゆったりと田園風景にひたり、時間にしばられることなく開放感たっぷりに食事を楽しんでいってほしいというのがお店のコンセプト。その日の予約者の席を使いまわすことなく、12時から15時までの3時間を贅沢に過ごすことができます。2年間予約待ちの理由の一端を垣間見た気がしました。
私とエミちゃんが通されたテーブル席は4人が座れる広さ。あらかじめ塗りのお盆がセットされています。ここにお料理が運ばれてくるんですね。ホール担当の娘さんが「本日はようこそいらっしゃいました」と、ていねいな挨拶のあと「こちらは無農薬の杜仲茶(とちゅうちゃ)です」と言って、お茶を運んできてくださいました。「順次お料理を運ばせていただきますので、どうかゆっくりとお過ごしください」。笑顔がステキなすばららしい接客でなごませてくれます。
杜仲茶をいただきながらしばし歓談。ほどなくして、食前酒に、ヤマモモとアセロラを使った自家製果実酒がきました。果実酒といってもノンアルコールなので車の運転もご安心ください、とのこと。これからいただくお食事を引き立ててくれるやさしいしい甘味と酸味でした。
食前酒といっしょに運ばれてきたのは先付けの嶺岡豆腐(みねおかどうふ)。嶺岡豆腐は吉野の葛と牛乳を練って生クリームを加えたものだということで、上に載っているわさびがアクセントになってこちらもやさしくまろやかなお味。スプーンですくうとねっとりプルンとした感触ですが、口に入れるととろけます。
前菜は4品の季節の盛り合わせ(上の写真)。左手前は季節野菜のピクルス。左奥の小鉢はナスとオクラの山掛け。右奥はインゲン、春菊、自家栽培のサツマイモを茹でたものに黒ごまのソースがかかったもの。右手前はゴボウと牛肉の一口サイズのしぐれ煮寿司です。
ピクルスは、コリンキー・エビ・カボチャ・赤カブ・レンコン・メロンを使った珍しいピクルス。ほどよい酸味が夏らしい一品(ひとしな)です。
ナスの煮びたしにかかった山芋はすり下ろしではなく、たたいて程よくつぶつぶ感があるのでシャクシャクとした歯ごたえも楽しめ出汁つゆで上品にまとまっています。
ごま和えはインゲンの程よい歯ごたえを残し、お芋の自然の甘さと春菊のいい香りが、濃厚なごまソースととてもよく合います。
ひとくち押し寿司は牛も出しゃばらず、酢飯も出しゃばらず、薄味にバランスよくまとまったやさしい味でした。
山歩さんのお料理はどれをいただいても、素材の味を大切にして天然素材の味付けにこだわった「やさしい」という言葉がピッタリのものばかりです。
杜仲茶は、好きなだけ飲めるようにとポットで持ってきてくれ、なくなったころを見計らってお代わりも運んできてくれます。
前菜のあとは旬のポタージュ。小カブと新ショウガの冷製スープで、上にかかった緑のピューレは小カブの葉をすりつぶしたもの。素材の味がそのまま自然で舌ざわりも滑らか。ひんやりとほどよく冷えた夏のスープです。
続いて自家製ドレッシングのかかったサラダ。トマト・きゅうり・コーン・玉ねぎ・サニーレタス・レタス・水菜と、どれもシャキッと新鮮。器もよく冷えています。自家製のドレッシングもさっぱりとしていながらコクもあって絶妙の美味しさ。
サラダを食べ終わり、いよいよメインのお魚料理が運ばれてきました。今日はサワラのソテーということでした。ソテーはパプリカとバルサミコ・チーズをふりかけてオーブンで焼き上げたそうで、黄色いソースは人参とアンチョビのソース、添え物にはじゃがいも・ズッキーニ・スイスチャードとサワラの上には玉ねぎのフライ。色合いもきれいです。
サワラは皮目は香ばしく、中はふわっと焼かれていて美味しく、こうしてサワラをいただいたのは初めて。自分がお料理を作るうえでの参考にもなりました。
デザートの前のお食事の締めはあんかけ揚げおにぎりの「かわりご飯山歩風」(かわりごはんさんぽふう)。固めにしっかりと握り揚げられたおにぎりに、たっぷりとあんがかかっていて、熱々をいただきます。2種類のきゅうりのぬか漬けが添えられています。
あんはお出汁が利いてしっかりとしたとろみがあります。上に載せられた大葉・カニ・そしてカラシがアクセント。このご飯もほかのお料理同様 やさしいお味ですが、揚げたおにぎりとあんの相性がよく、たまらなく美味しい一品でした。
お食事が終わりデザートです。食後の飲み物はコーヒーか紅茶が選べます。私たちはコーヒーにしました。コーヒーといっしょに、エレガントなお皿に3品の夏らしいデザートが載せられ運ばれてきました。
本日のデザートは自家製ブルーベリーのシャーベット、ラズベリープチケーキ、ヤマモモの3品。シャーベットのブルーベリーには地元松伏産ブルーベリーを使用。大きなヤマモモは山歩の庭で採れたヤマモモだそうで甘酸っぱくジューシー。ラズベリーのケーキにかかっていたのはラズベリーとキーウィの色鮮やかなソース。デザートの中でもシャーベットのフレッシュなおいしさには感動しました。甘さもしつこくなくスッと溶けて口に残らない甘さ。
コーヒーは飲みやすいものでした。女性らしい花柄のノリタケのカップで提供してくれます。エレガントで上質な時間を演出してくれるこだわりがこんなところにもあるんですね。食後の飲み物(コーヒー・紅茶)はお代わりもできます。
緑深い景色の中でおしゃべりにも興じ、時の流れに身をまかせながらゆったりと美味しいランチを堪能することができました。デザートとコーヒーをいただき、すべてのお食事が終わって時計を見ると午後2時半。私とエミちゃんは2時間半もこの場所(散歩さん)で過ごしていたんですね。2時間半かけてのランチ。なんとも優雅で贅沢な時間でした。
帰り際、テーブルのメニューに書かれていた「八海山の甘酒」がとても気になったので伺ったところ、山歩のオーナーでシェフの奥様が「ほかの甘酒とはぜんぜん違います。とても美味しいですよ」ということで、1本買って帰ることにしました。
お会計を済ませ、当然、2年先の予約をもう一度お願いし、大満足でお店をあとにしました。次回は2019年の7月におじゃまします。